賃貸経営メールマガジン

消火器の設置基準策

法律・条例・制度メンテナンス・管理
2024/3/7

建物を建築する際、建築基準法都市計画法をはじめ各自治体の条例など、様々な法令に適合した建物としなければなりません。
賃貸物件の新築の場合にも同様で、各法令の規定に即した建築の計画が必要です。

この法令の中には消防法をはじめとする消防法令も含まれています。消防法令において、建物の規模・用途によって必要な消防設備の設置が規定されています。最も一般的な設備の例として消火器の設置が挙げられます。消火器を設置しなければならない建築物とし、共同住宅は、延べ面積が150㎡以上の場合に設置義務が生じます。(ちなみに、飲食店、店舗、ホテル、工場、倉庫なども同じ面積の規定に該当します。)

 

ここで1つ注意しなければならない規定があります。
例えば地上3階建で、各階の床面積が各70㎡、1階が事務所・2~3階が共同住宅の場合、消火器をどのように設置しなければならないでしょうか。1棟の建物内で複数の用途が存在する場合、それぞれの用途部分を1つの対象物とみなして設置基準を適用します。事務所は、延べ面積が300㎡以上の場合、消火器の設置義務が生じます。従って、1階には消火器の設置義務は生じません。一方、2~3階の共同住宅は延べ面積が70㎡×2=140㎡となり、こちらも消火器の設置義務が生じないのでは?と思われますが、消防法令において、特定の階に消火器の設置義務が生じる場合の規定があります。
それが、「地階、無窓階または3階以上の階で、床面積50㎡以上のもの」に消火器の設置義務が生じる、という規定です。例に挙げた3階建の建物は、3階の共同住宅部分がこの規定に該当し、3階には消火器の設置義務が生じることになります。

 

では、具体的に何本の消火器を設置しなければならないのでしょうか。まず、消火器の消火性能を比較する指標として「能力単位」という値があります。これは、消火器の消火試験により測定されます。(試験用の模型に点火してから一定時間後に消火を開始し、消火器の放射終了までに完全に消火できた模型の数によって、能力単位の値が決められます。)

一方、建物にどのくらいの消火器を設置しなければならないかを表す値として「所要能力単位」というものがあります。例えば、ある建物の「所要能力単位」が10で、設置する消火器1本の「能力単位」が1であれば、消火器を10本設置しなければならないということになります。(「能力単位」が2の消火器であれば、5本設置しなければなりません。)

この「所要能力単位」算定方法ですが、共同住宅の場合、「延べ面積(または床面積)÷100㎡(算定基準面積)」で算定されます。例えば延べ面積500㎡の共同住宅では、500㎡÷100㎡=5 で、「所要能力単位」は5となります。

 

こうして設置されて消火器については、定期的な点検と報告が消防法で義務付けられています。共同住宅において設置された消火器については、6ヶ月に1回の機器点検と、3年に1回の報告書提出(消防長または消防署長あて)が必要となります。設置された消火器の定期的な点検が行われず、火災が発生してしまった場合、消火器が正常に作動しないことにより、被害が拡大してしまうなどの恐れがあります。

昨今、この点検や報告がされていない場合、管轄消防署の立入査察を受けるケースも非常に多くなっております。万が一の時に備え、入居者様が安心して生活が出来る物件をつくり、これを維持していくことが物件を所有するオーナー様、物件を管理する管理会社にとって特に重要です。この視点に立って、今後も弊社から様々なご提案を行ってまいります。

 

本社 運営推進事業部
岡野 明徳

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