マンション建替え決議は、家主都合解約の正当事由となるか?&オーナー様向け!ご好評につき再び開催!無料相続税対策セミナー
建物普通賃貸借契約において、賃貸人から賃貸借契約の更新を拒絶して契約期間満了をもって解約を申し入れたり、契約期間中に賃貸借契約の解約を申し入れたりする際には、正当事由が必要です。
この点は、借地借家法において明確に規定されています。正当事由として妥当であると判断されるものは様々です。
今回は、マンションの建替え決議が成立している事が、正当事由として認められるのか? という視点でお話ししたいと思います。
このような事例で、2つの裁判例があります。
① 正当事由として認められた裁判例 (東京地方裁判所 平成20年7月18日)
賃貸借契約書において、「取壊日が確定した場合、賃借人は、本件建物を賃貸人に明け渡す」とする明渡し条項が盛り込まれている事例において、裁判所の判断は、「本件明渡し条項が建替え決議の成立のみをもって他に何らの正当事由なくして本件契約を解除し得るものとする趣旨と解する限りにおいては無効というべきあるが、同条項は、将来建替えがあり得ること、その際には賃貸人は本件契約を終了させる意思であることを賃借人に予告したものとして正当事由を構成する一要素として考慮することを妨げない」として、立ち退き料支払いを条件とせず、無条件で、正当事由を肯定しています
② 正当事由が否定された裁判例 (東京地方裁判所 平成20年1月18日)
建て替え決議が成立しているケースにおいて、理容室を営業している賃借人に対して建替え決議を理由に賃貸借契約の解約を申し入れましたが、賃借人が理容室を営業して生計を立てており、建物の必要性が高いことを理由に、正当事由は否定されました。
これらの裁判例から推量すると、賃借人に対して事前に建替えに関する情報提供や、賃貸借契約上での明渡しに関する条件の明文化などがない状態で、建替え決議を理由とする賃貸借契約の解約申入れは、正当事由として認められにくいと言えるでしょう。
例えばマンションの総会などで建替えが議題となっていたり、検討がされていたりなどの状況であれば、賃貸借契約書に将来的な建替えによる解約の可能性を盛り込むことはもちろんのこと、賃借人の募集の段階から将来の建替えの可能性を示して募集活動を行うことも、スムーズな明渡しや賃借人とのトラブル回避の観点からも重要です。仮に事前の情報提供や賃貸借契約書での明文化がされない場合には、立退料の支払いによって、正当事由の補完・補強を図る必要があるでしょう。
一方で、現在、老朽化するマンションの増加が問題となっています。国土交通省によると、築30年以上のマンションは、2021年末時点で全国に249万戸あり、20年後にはおよそ2.4倍の585万戸になると見通しています。マンションの建替えを進めることでこの問題の解消を図るという点から、マンション建替えの前提となる区分所有者の総会での建替え決議要件の緩和が法務大臣の諮問機関である法制審議会において検討されています。
現行の区分所有法では建替え決議の要件として区分所有者の4/5の賛成が必要と規定されています。これを3/4に緩和することが検討されています。また、所在不明の区分所有者を決議の対象から除外することも新たに検討されています。
この緩和措置が実際に採られることで、将来建替え決議が成立するマンションが増えることも予想されます。
これによって、建替え決議を理由として賃貸借契約の解約申入れが増えることも予測されます。スムーズの賃貸借契約の解約を行うための対策(定期建物賃貸借契約の導入も1つの有効な選択肢と言えるでしょう。)を事前にしっかりと講じておく必要があるでしょう。
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