【賃貸物件の引き継ぎ】に関する細かなオーナー業務
人生100年といわれるようになり、長生きが当たり前になってくるこれからの時代において、賃貸不動産のオーナー業をご子息、親戚などの後継者へ引き継ぐタイミングが難しくなってきております。忙しい子世代に気兼ねしてなかなか言い出せない、誰に引き継ぐかまだ決められない、まだまだ先の話にしておきたいなどの理由で親世代がオーナー業をすべて抱え込んでしまい、必要な引継ぎができないまま相続発生してしまうケースも増えてきております。引継ぎ業務がなるべく楽になるよう、そして将来後継者が困ることがないよう、日ごろから整理しておきたい内容をお話できればと思います。
賃借人関連の情報整理について
賃貸管理会社に管理委託している場合はなにも問題ありませんが、オーナーがご自身で自主管理されている場合、まずは賃貸借契約の内容が分かるように日ごろから整理しておくことが重要となってきます。
賃借人の退去や新規の入居に伴って、オーナーの手元には多くの書類が届きますが、その整理が出来ておらず、現状況を把握されていないケースが散見されます。賃貸借契約書用のファイルを用意し、各部屋番号に「現在継続中の賃貸借契約に関する書類のすべて」を入れるようにしてください。賃貸借契約が解約となり退去が済んだものに関しては、賃貸借契約書類は別のファイルに移し、万が一のトラブルに備えてすぐに処分せずに、しばらく保管しておくことも大切です。
賃貸借契約書用のファイルには、最初の契約時の書類として「入居申込書」「賃貸借契約書」「家賃保証会社の契約書」「賃借人の身分証明書等」一式が揃っているか確認し、契約更新があった場合はそのタイミングで変更点が発生している可能性がありますので、「更新関連書類」も忘れずに時系列に保管するようにしてください。もしも入居中に契約内容に変更が生じた場合は、口頭ではなく必ず書面化し、一緒にファイリングしましょう。
また、家賃滞納に関する情報や、入居中の設備故障の修繕の情報、クレームの情報なども、その賃借人の賃貸借契約に関する情報と一緒に管理しておくことで、賃借人と何らかのトラブルが発生した場合、入居してからその賃借人との間で発生した様々なことを理解した上で対応する必要がありますが、それらの情報が整理されていれば、後継者が不利な立場に置かれずに済むはずです。
土地と建物に関する情報について
入居者との賃貸借契約書用のファイルは退去とともに入れ替えが必要ですが、建物に関する情報はずっと継続した管理が必要となります。
オーナー業を引継ぎされた後継者の立場となった方からよく聞くものが、「建築図面がなくなっている」ということです。建物の修繕やリノベーション、募集の際にあると役立ちますので、申請図面や竣工図面は必ず保管しておきましょう。もしそれらが無いのであれば、後継者が無駄にずっと探し続けることがないように、無いという事実確認ができるようにしておきましょう。また、売却する場合にも使いますので、建築確認申請書、検査済証と一緒に保管しておくと安心です。
建物の鍵の管理についても重要で、新築時に施工会社から引き渡された複数の鍵がきちんと管理されていないことが非常に多く、管理室やポンプ室の鍵が紛失していたり、入居者入れ替え時に交換済みなのに何故か古い鍵が残っていたり、どこの鍵か分からないものが混じっていたりするケースがあります。必要な時にすぐに使えるように鍵一覧を作成し、鍵にはラベル付きのキーホルダーを付けて分かりやすくきちんと整理しておきましょう。
その他、ケーブルテレビやインターネットの契約や、防犯カメラや宅配ボックスなどの保守点検を依頼している場合には、設備の取扱説明書と一緒にそれらの契約書も必ず保管しておきましょう。
賃貸不動産の経営というと建物ばかりに目が行きがちですが、土地に関する情報も重要です。測量を実施している場合は地積測量図、土地が借地の場合は借地契約に関する書類なども抜け目なくまとめておきましょう。
建物の点検書類を時系列でまとめる
消防設備や給排水設備、エレベータ-など点検が法律で義務付けられているものについては、万一の事故の時などに所有者責任を問われないよう必ず点検を実施し、報告書類を専用のファイルで時系列にまとめておき、点検で指摘事項が上がった場合は修繕や部品交換等の対応を行い、その書類も一緒に保管することと、法定点検以外に専門業者に依頼した清掃業務等がある場合は、依頼先や依頼内容、実施状況が分かるようにあわせて整理しておくといいでしょう。
修繕履歴の整理について
建物の維持管理には修繕が必ずついてきます。建物の寿命は長く、同じ箇所の修繕を繰り返し行うこともあります。依頼はいつどこで行い、修繕費用はいくらだったのかなどの細かな履歴を残しておくことや、居室内のリフォームや修繕の書類は、部屋ごとにまとめておくと後々どこの個所で修繕を行ったか分かるので便利です。また、古い賃貸借契約書は別に保管し、修繕の書類は抜き出して部屋ごとにまとめておきましょう。
賃貸管理におけるオーナー業務は書類がとても多く、情報も細かいため、引き継ぐのは簡単ではありません。常日ごろから必要な情報が整理されていれば、何かあるごとにトラブルが少なく後継者に伝えることができますし、万一の事があった場合でも、後継者が慌てずに済みます。
相続発生のタイミングで自主管理から管理会社委託に変更する場合においても情報が分かりやすく整理されていれば業務がスムーズに行えます。
これを機に少しずつでも整理を始めてみてはいかがでしょうか。
弊社では賃貸における管理替えのご相談や相続問題についても、随時ご相談を承っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
城東支店 アンサー事業部
原田雅章