『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』が制定されました
半年程前に『心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン案を公表』と題したメルマガをご紹介しましたが、7回の検討会を重ね、『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』が国交省にて制定されました。
前回の記事にも書いたように、ガイドライン制定前の不動産取引においては、主に住宅として用いられる不動産において、取引の対象の不動産で生じた人の死について、宅地建物取引業者による適切な調査や告知に係る判断基準がなく、取引現場の判断が難しいことで、円滑な流通や安心できる取引が阻害されていました。
また、判断基準がないことで、所有する不動産で死亡事故等が生じた場合に、「全て事故物件として取り扱われるのではないか」といった所有者側の懸念もあり、高齢者の入居が敬遠される一因ともなっています。
今回のガイドラインでは、告げなくてもよいケースとして
(1)取引対象不動産において生した自然死又は日常生活の中での不慮の死(入浴中の溺死や転倒事故、誤嚥など)が発生した場合
(2)取引対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分(ベランダ等の専用使用が可能な部分の他、共用玄関やエレベータ等のうち借主が通常使用すると考えられる部分)で発生した(1)以外の死や特殊清掃等が行われた(1)の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後
(3) 取引対象不動産の隣接住戸又は日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した(1)以外の死・特殊清掃等が行われた(1)の死
については原則として告げなくてもよいとされています。
逆に(1)~(3)のケース以外の場合は、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告げる必要があり
(2)・(3)の場合でも、事件性・周知性・社会に与えた影響等が特に高い事案は告げる必要があるとされています。
なお、告げる場合は、亡くなった方やその遺族等の名誉や生活の平穏に十分配慮し、氏名・年齢・住所・家族構成や具体的な死の態様・発見状況等までは告げる必要はなく、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合には発覚時期)・場所・死因(不明である場合にはその旨)及び特殊清掃等が行われた場合にはその旨を告げるものとする。と記述されています。
あくまで裁判例等を考慮の上、妥当と考えられる一般的な基準を取りまとめて作成されたガイドラインですので、曖昧な点はどうしても多く、
「人の死が生じた建物が取り壊された場合の土地取引の取扱い」、「転落により死亡した場合における落下開始地点の取扱い」等
裁判例等の蓄積がないものは、今後の事例を踏まえてガイドラインへの更新を検討していくようです。
賃貸経営を続けていくと様々な不安要素も出てくるかと思いますが、「死」に関しては特に慎重に対応していかなければ今後の賃貸経営に影響が出てしまいます。
今回の記事に関するご不安だけではなく、もちろんその他の心配事もご相談いただいた際には一緒に解決できれば幸いです。
神奈川支店 アンサー事業部
土屋一夢