都市計画法第53条の許可とは?
建物を建築しようとする際、建築基準法をはじめ、様々な法令・条例に適合した建物を建築しなければなりません。この建築予定の敷地が、建物建築に際して都市計画法第53条に規定する許可が必要となる
場合があります。
今回はこの都市計画法第53条の許可についてお話し致します。
都市計画法第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。
〈以下省略〉
都市計画法第53条にはこのように規定がされています。建築物の建築を計画している敷地が都市計画施設などの区域に該当する場合は、注意が必要となります。一般的に多く見られる事例が「都市計画施設」
に該当するケースと言えます。都市計画施設とは、都市計画法に定められた都市施設(道路、公園、都市高速鉄道、河川など)に関して、その名称、位置、規模などが都市計画に定められたとき、その都市施設を「都市計画施設」と言います。
例えば、新たに道路を作るという都市計画が告示された場合、その予定されている道路の敷地が、都市計画で定められた都市施設の区域に該当し、都市計画施設の区域となります。
都市計画の告示により都市施設の都市計画が正式に効力を生ずると、その都市計画施設の区域内では、近い将来都市計画施設を実際に整備する工事が実行されることになります。そこでこうした将来の整備事業の実行に対して障害となる恐れのある建築行為等は制限されることになり、建築物の建築には許可が必要となります。
建築が許可される建築物の要件は、建築物の主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造、階数が2以下(自治体によっては3以下)で地階を有しないものであり、かつ容易に移転しまたは除去できるもの、とされています。都市計画施設の区域内では完全に建物の建築が認められない、というわけではありません。上記の要件を満たす建築物であれば、許可を得た上で建築が認められます。
では、この都市計画施設の区域内で賃貸物件を建築する場合、どのような点を考慮しなければならないでしょうか。
都市計画施設を整備するということは、当該区域を一度更地にする必要があります。建築が許可された建築物も事業の進展によりいずれは解体しなければなりません。賃貸物件においては、解体を行おうとする際に居住する入居者に立ち退きをお願いしなければなりません。事業の実施時期が近い将来で具体的になっている状況であれば、入居者に対して賃貸契約締結前に告知をしなければなりません。入居者がいずれは立ち退かなければならないことに了解をしてもらう必要があります。また、建物解体までの時期が短期間であれば、入居者の募集自体を停止することも考えなければなりません。
都市計画施設の整備事業は、計画決定→事業決定の過程を経て実際の事業が執行されますが、この計画決定がされてから数十年間過しても事業決定に至らないケースも多く、入居者の立ち退きや建物解体が相当先の時期になることもあります。事業の進捗によっては、入居者募集時の告知を行うまでに時間的な余裕がある場合もあります。入居者とのトラブルを回避しつつ、時間的に可能な限りの賃貸経営を継続して行うには、なによりも都市計画施設事業の進捗状況を確認することが重要です。
賃貸物件の建築予定地が、都市計画施設の区域に該当する場合、最終的な建物解体まで経過を予測しつつ、都市計画施設事業の進み具合を考慮に入れた計画の立案が特に重要と言えるでしょう。
運営推進事業部 岡野 明徳