賃貸経営メールマガジン

【警鐘】施行不備物件に関する確認のススメ

構造メンテナンス・管理トラブル購入・売却投資建築計画トレンド
2021/8/26

2021年4月に八王子のとある賃貸アパートの共用階段が崩落し、死亡者1名を出してしまうという、いたたまれない事故が起きてしまいました。ニュースや新聞紙面等の各報道でも大きく取り沙汰されましたので、皆さまもご存知かと思います。

また、他人ごとではないと思われている方も多くいらっしゃるかと思います。

今回は皆様が所有されている物件が『施行不備物件だったらどうすればよいのか?』
また、そのようにならないために、『どうしたら事前に防止ができるのか?』
についてお話させていただきます。

 

前述致しました<八王子 共用階段崩落事故>はなぜ起きてしまったのでしょうか?
どのような物件で、建築施工はどのような会社であったのでしょうか?

当該物件を施工した施工会社の特徴として、

・木造3階建ての単身タイプアパートの建築を売りにしていた

・単身タイプ1室の建築平均単価が250万円前後

という特徴に着目したいと思います。

 

報道によりますと、木質の階段踊り場に対して、鉄製階段をビスで固定するという施工がされていたとのことでした。

木造の住宅であっても原則共用階段は鉄骨で組みます。今回は木に鉄製の重い階段をビス止めするという方法を取っており、木材に重い重量物を支持させるという危険な工法です。

少し想像を働かせただけでも危険性が手に取るようにわかります。

※通常、木造建築でも安心であることがほとんどであり、木造住宅自体が危険であると述べているわけではありませんので、誤認されないようご注意ください。

 

また、単身タイプの1室の建築平均単価が250万円前後ということも非常に懸念される点であると個人的に考えます。

木造単身タイプの建築単価は通常安くても500万円程度、平均700~800万円程度が一番多い金額帯かと思われます。

 

皆さまご想像が容易と思いますが、建築コストのカットを図れば

【1】利回りが良くなり、儲かるように見える

【2】借入金が少ないので、融資が通りやすい

【3】建築請負契約が取りやすい

(建売の収益物件の場合は売りやすくなります)

ということになります。

 

なぜ、建築費が安いことを懸念するのか?

 

【1】で申し上げた通り、儲かりやすく見えるだけになりがちです。なぜならば、過剰に建築

コストをカットして利回りの改善を図っているわけですから、必要なもの(設備や部材、八王子の件では階段)までカットしている可能性が大きいのです。

昨今の賃貸物件への入居希望者は以前とは比較にならないほど、充実した設備を望んでいますし、近隣の競合物件も充実した設備を標準の設備として導入しております。

ですから、過剰なコストカットでの建築計画は空室期間が長引き、実際に見込んだ収入が実現できない可能性も当然に大きくなりやすいのです。

しかしながら、不動産に投資をされたい方々は利回りを重視しすぎる傾向が多いように思います。もちろん、そういった収益性も大事なのですが、成約事例やその都度の市況の確認を怠ってはいけません。

賃貸アパート・マンションを専門に扱う賃貸管理会社には、必ず相談をするべきであると考えます。

 

【2】で申し上げました融資が通りやすいですが、こちらも借り入れができればいいというも

のではありません。金融機関は構造等から担保評価を計算できるだけで、建物診断ができるわけではありません。

そして【1】【2】に気づかず【3】の契約をしてしまいがちですが、前述のとおり削減されている建築コストの項目によっては、賃貸経営が上手くいかないどころか、今回の<八王子 共用階段崩落事故>のような大惨事に繋がりかねません。

 

大惨事な事故に繋がらなくとも、商談の際に参考資料として出される収支表や利回りは、賃料の相場から算出されたものではなく、建築費や売却価格(建売の場合)から利回りが7%以上になるように逆算され賃料がつけられたものが散見されますので、実際にその通りの賃料で成約させることの難易度が高いことが多いです。

もちろんその場合、見込んだ収支にはならず、全く手残りがなくなるケースも存在するのではないでしょうか。

さらにそこへ施行不備が判明した場合、目も当てられません。

 

では、建築した(購入した)賃貸物件が施行不備物件なのか?

もしそうだったら、どうしたらよいのか?
まず、疑わしい施工会社で建築(または不動産会社から購入)された場合は、ホームインスペクション(住宅診断)を受けて頂くことをおすすめ致します。

ホームインスペクションは不動産取引の際の説明義務がある(ホームインスペクション実施を義務付けるものではありません)ほどですので、大惨事になる前に未然に事故や損失をある程度防げるかもしれません。

 

そして、施行不備が見つかった場合、建築請負契約書(売買契約書)やそれに付随する取り交わし書類の内容を確認してください。

場合によっては、施工会社や売主へ2020年4月に改正された民法上の「契約不適合責任」を追及することが可能かもしれません。

「契約不適合責任」が適用された場合ですが、損害賠償請求をすることが可能かと思われます。

 

どうしたら事前に防止ができるのか?

前述のとおり、建築(購入)された後では、ホームインスペクションを受けて頂くしかありません。

あとは、そのような物件を掴まされないようにするほかありません。

それには、建築費や価格が安すぎる且つ利回りが良すぎる物件は要注意して頂くことです。不動産投資をされたい方が非常に増加していますが、なかなか物件が購入しづらく且つ融資が通りづらい情勢かもしれません。

それでも慎重さは捨てないでいただきたく思います。

 

不動産は投資ニーズが高いため『安かろう悪かろう』が多い性質を持っています。また、金額の大きい買い物になりますので、普通の商品を買って「まぁいいか」では済まない損失になります。

とはいえ、多方面のブレーン(賃貸管理会社や関係業者等)への確認作業を行い、正しい投資の仕方をされれば、不動産投資はかなり安全な投資になりえます。ですから、投資ニーズが高いのです。

 

「正しい利回りなのか?」、「建築費等の金額が安すぎやしないか?」

弊社で診断をさせて頂いております。

ホームインスペクションについてもご相談を頂ければ、ご紹介させて頂きます。

その際は、お気軽にお申し付けください。

 

アンサー事業部 夏 啓安

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