『賃貸住宅管理業法における業務管理者の配置』
昨年、当メールマガジン 2020年7月30日号で、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立したことをお伝え致しました。
法律の成立から1年が経過し、いよいよ今年6月に法律の施行となりました。
サブリース業者と建物所有者との間の賃貸借契約の適正化と、賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設を柱として新しい制度が整備されています。
今回は、この法律の柱の1つである、賃貸住宅管理業の登録制度の中で規定されている、業務管理者の配置義務についてお話し致します。
賃貸住宅管理業法において、管理戸数が200戸以上の管理業者は、国土交通大臣の登録が必要となります。
この登録義務を課される管理業者においては、1事業所または営業所ごとに業務管理者を1人は必ず配置しなければなりません。
この業務管理者として、
1. 2020年までに賃貸不動産経営管理士試験に合格した管理士で、国に定められた移行講習を受講した者
2. 宅地建物取引士の有資格者で、指定講習を受講し、管理業務の実務経験が2年以上ある者
3. 国が登録証明事業実施機関として、一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会を登録した場合、2021年以降の登録試験(実際には賃貸不動産経営管理士試験が予定されています。)に合格した管理士で管理業務の実務経験が2年以上ある者
のいずれかが認められることとなりました。弊社も管理戸数200戸以上の管理業者として既に登録を行い、上記の業務管理者の配置義務を負っています。
宅地建物取引業法で宅建業者は、ひとつの事務所において業務に従事する者5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
今回の賃貸住宅管理業法における管理業務者の配置義務は、この宅建士の設置義務を踏襲している印象があります。
今のところ上記2のように、賃貸不動産経営管理士の資格を取得していない人も業務管理者になれる仕組みにはなっていますが、将来的には経営管理士のみが業務管理者となれるように制度が変更される(②の要件はいずれ廃止される)のではないかと思われます。
このことは、賃貸住宅管理業法の施行に伴い、国土交通省が本年6月に賃貸不動産経営管理士を国家資格化する省令を出した事からも予測できると言えるでしょう。
ちなみにこの賃貸不動産経営管理士の資格試験ですが、2020年度より問題数が40問から50問に増え、試験時間も90分から120分となり、宅建の資格試験と全く同じ問題数・試験時間となりました。
合格率も、
2018年度 50.7%
2019年度 36.8%
2020年度 29.8%
と推移しており、年々問題の難易度が高くなっています。
国家資格化が決まり、更に難易度が高まって一層資格取得が難しくなるのではないかと思われます。
不動産売買・賃貸契約に先立っての重要事項説明は、宅建士でなければできない業務として広く知られています。
賃貸住宅管理業法においても管理受託契約締結前に重要事項(管理業務の具体的な内容や実施方法)の説明が義務付けられていますが、この説明をする者は管理業者の従業員であれば、現時点では要件はありません。
しかしこの重要事項説明も将来的には宅建士のように、業務管理者のみが行える業務となることでしょう。
今後、賃貸住宅管理業法が更に改正・整備されることにより業務管理者の役割が増え、管理業者の中で重要な地位を占めるようになることでしょう。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。