民法改正で変わる連帯保証人制度
前回「保証人と連帯保証人の違いは?」と題して特に連帯保証人の役割や責任などについてお話しました。
この連帯保証人の制度ですが、今般の民法改正によってその仕組みが大きく変わることになります。建物の賃貸借契約に即してその内容をお話します。
(1)個人連帯保証人の保証限度額の設定
連帯保証人の責任は重いことを前回お話しました。建物賃貸借契約においても滞納賃料や賃借人の責めによる設備等の補修費用、退去時に賃借人が負担する原状回復費用などの債務を連帯保証人は保証しなければなりません。
「連帯保証人は、賃貸人に対し、賃借人が賃貸借契約上負担する一切の債務を連帯して保証する」とした保証に関する契約を締結してしまうと、過大な負担を連帯保証人は負うことになってしまいます。
そこで連帯保証人を保護し過重な負担を強いることのないよう連帯保証人が負担する最大限度額(これを極度額と言います。)を契約において、書面等にて定めなければならないと改正民法では規定しています。
この極度額の範囲内において連帯保証人は債務を保証することになります。この極度額を規定しない場合、保証契約は無効となり、賃料滞納が発生しても連帯保証人に対して支払いを求めることはできません。
(2)賃借人が死亡した後の債務は保証の責任範囲外とする
賃借人が死亡すると賃借権を相続人が相続し賃貸借契約は引き継がれます。賃貸借契約を引き継いだ相続人が賃料の支払いを滞納してしまった場合、連帯保証人はその債務を負わなければならないのでしょうか。
そもそも連帯保証人は亡くなった賃借人との信頼関係、合意があって債務を保証しています。言い換えると相続人と連帯保証人との間には信頼関係や合意はないと言えます。連帯保証人の過重な負担を避けるべく、連帯保証人保護の観点から賃借人死亡後に発生する賃料滞納などについて連帯保証人は責任を負わないこととしています。
(3)賃貸人の連帯保証人への説明義務
連帯保証人は賃借人の賃料支払いが滞ってしまった場合、その債務を負わなければなりません。賃料の支払い状況は連帯保証人にとって重要な関心事です。そこで連帯保証人から請求があれば賃貸人は家賃の支払い状況や滞納額を伝えなければならない、と規定しました。
ここで個人情報の保護という観点が関わってきます。賃借人の同意なしにこうした情報を提供できるか、という問題が生じます。
改正民法では情報が伝えられることで連帯保証人が保護されるようにするため、賃借人の同意がなくても連帯保証人の求めに応じ情報提供ができ、情報提供を義務として規定しています。
以上の変更は、連帯保証人が過重な負担を強いられないよう保護する観点から改正民法に新たに盛り込まれています。これらの変更は、弊社の日常業務にも直結する内容が含まれますので、改正民法の規定に即して業務において対応してまいります。
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
運営推進事業部 岡野 明徳