新たな用途地域が創設されました
今回は所有している土地を売却する、または新たに賃貸アパート・マンションを建てるために土地を購入する際に深く関わってくる用途地域についてになります。
ご存知かと思われますが、生産緑地法等の改正により4月から都市計画法上の新たな用途地域が創設されました。その名は『田園住居地域』といいます。
ここでは、改めて
・用途地域の基本
・『田園住居地域』とはどんな用途地域なのか
・どんな規制・制限があるのか
・今後の不動産取引にどう影響するのか
について、まとめていきたいと思います。
■用途地域の基本
まずは用途地域の基本からおさらいしてみます。
用途地域とは地域を区分して、建築あるいは建築の規模に制限を加え、住環境を整えることを目的としています。
(自宅の隣にいきなり深夜営業の飲み屋さんや粉じんや異臭のする工場が出来たりしないように)種類は下記のとおりです。
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・近隣商業地域
・商業地域
・準工業地域
・工業地域
・工業専用地域
住居系の用途地域が7種、商業系が2種、工業系が3種の合計12種類です。そして、今回創設された『田園住居地域』は住居の文字が入っておりますので、当然、住居系の用途地域に加わります。ですので、住居系が8種で合計13種類となったわけです。
ちなみに余談ですが、私が用途地域を初めて覚えた際の覚え方としては、第一種低層住居専用地域が建築の制限が一番厳しく、商業地域まで下に行くほど徐々に制限が緩くなっていくという覚え方をしていました。しかし、都市計画法上『田園住居地域』は『準住居地域』と『近隣商業地域』の間に定められましたので、少しその覚え方の法則が崩れます。
なぜでしょうか?
それは、建築規制が低層住居地域ベースとなるからです。
■『田園住居地域』とはどんな用途地域なのか
では、『田園住居地域』とはどんな用途地域なのかに触れていきます。
国交省によりますと
【課題・背景】
・宅地需要の沈静化・住民の都市農業に対する認識の変化→ 都市農地を 都市にあるべきものへ(都市農業振興基本計画)
・マンション等の建設に伴う営農環境悪化の防止
・住居専用地域に農業用施設等は原則として建てられない状況
【改正内容】(目的)
住宅と農地が混在し、両者が調和して良好な居住環境と営農環境を形成している地域を、あるべき市街地像として都市計画に位置付け、開発/建築規制を通じてその実現を図る
※国交省資料より
とあります。
■どんな規制・制限があるのか
そして、肝心の建築規制・制限ですが、簡略的に挙げますと前述の通り低層住居専用地域をベースに容積率:50~200%、建ぺい率:30~60%、高さ:10or12m、外壁後退:都市計画で指定された数値となります。明らかに建築規制・制限は現在の用途地域内では厳しい側になります。
■今後の不動産取引にどう影響するのか
弊社でも先月に生産緑地セミナーを行いましたが、2022年の生産緑地指定解除の際に、生産緑地全体の約8割が指定期限を迎えるといわれております。
この件については以前の弊社メルマガでも触れておりますとおり、売却や有効活用も可能となります。
『どうなる!?生産緑地』
https://www.hiro-web.co.jp/magazine/magazine-0-100/
農地の所有者は、高齢化が進んでおり相続税対策等の税金対策として売却等を検討する可能性が非常に高いです。
場合によっては、いっきに宅地化された生産緑地が不動産市場に流れ込むことになります。
生産緑地を残すための具体策のひとつとして創設されたと考える一方で、政府としては多くの空き家問題等の未解決問題を抱えた市場に対し、短期間で宅地化された生産緑地が多量に・過剰に流入することを危惧しています。そして、それをある程度抑制するべく、なにか対策を講じなければならないという思惑もあったかと思います。建築規制・制限を携えた『田園住居地域』の創設はその対策の一環でもあるかと思います。
用途地域は不動産売買において重要事項説明の説明義務がありますので、今後の不動産取引において、見落とすことはないかと思いますが、『田園住居地域』においては思うような賃貸計画ができない可能性があるとご周知いただきたく思います。
ただ、用途地域を指定する場合は都市計画の変更をしなければなりません。実際の指定は今回の『田園住居地域』の創設・施行から何年後かになるかと思いますので、近々でお目にかかることは、なかなかないかと思います。
しかし、忘れたころに指定が増えていくことが考えられます。ご自身の所有地や購入検討地において、よくご確認いただくことをお勧めいたします。