更新料差止請求について
あけましておめでとうございます。本年も『賃貸経営を応援するメールマガジン』をよろしくお願いいたします。
今回は佐々木が担当いたします。
以前、更新料の波紋ということで、更新料についての条文を差し止める訴えを適格消費者団体が起こした件については、この場で少し述べさせていただきました。今回はもう少し詳しく述べたいと思います。
昨年の9月6日、東京都内にある適格消費者団体が、賃貸管理会社を相手取り、賃貸借契約の約款について、その条項の差止め請求の訴えを東京地裁に起こしました。該当する契約事項は次のとおりです。
1.契約期間中に貸室の損傷の原因が賃貸人にあるか賃借人にあるか不 明確である場合、賃借人がその壁・天井・床・鍵等の修繕費用を負担する。
⇒賃借人に責任がない場合の修繕費用を負担させる条項は無効。
2.賃借人が後見・保佐・補助開始の審判を受けたときおよび、破産などの申し立てがあったときは、賃貸人は催告なしに賃貸借契約を解除、ならびに更新の拒絶が出来る。⇒賃貸借契約の解除事由が無効。
3.賃貸借契約終了時、経年変化・自然損耗の場合でも、重量物の設置による床材等のへこみや、冷蔵庫の裏の電気やけ、ルームクリーニングや
カーペットクリーニングなどの原状回復費用は、賃借人の負担とする。⇒通常損耗の原状回復を賃借人が負担する旨の条項は無効。
4.賃貸借契約の更新に際しては、更新の種類を問わず、賃借人は更新料を賃貸人に支払う。⇒更新料の支払い合意は無効。
5.賃貸借契約の終了ないし解除により賃貸物件を明渡さければならないとき、同物件の明渡しを遅延した場合には、賃借人は、契約終了ないし解除の意思表示の到達した日の翌日から明渡し完了までの期間につき、賃貸人に生じた実際の損害額に賃料等相当額の倍額の金額を加えた損害金を支払う。⇒明渡し遅延による使用損害金の合意は無効。
以上の5つです。これらが、消費者契約法第10条に違反しており無効というものです。差止めることにより、賃貸借契約で、上記のような条項は使用できなくなります。また、この条文自体が無効とされるため、これらを使用した賃貸借契約においては、過去に遡って賃借人が負担した原状回復費用や更新料の返還請求の訴訟が多発することが予想されます。
特に4番目の更新料については、差止め請求としては、初めてのことです。
更新料無効の大阪高裁判決をきっかけに、消費者側が先手を打った形となりました。本件の判決がまだ出ていないので、実際賃貸業界に大きく影響を及ぼすのは、判決が出た後になりますが、仮に差止めが認められた場合、同様の訴訟が飛躍的に増えるでしょう。
これはあくまでも不当と判断される条文の使用を差止めるのが目的ですが、差止めが決まれば、前述のように返還請求に発展していきます。
そうなれば、賃貸人の経済的負担はかなり厳しいものとなるでしょう。
今後本件について、どのような判決が下されるかによりますが、いずれにせよ、早急な対策をとらなければならないのは確かです。判決が出ましたら、またこの場で、詳しく述べさせていただきたいと思います。
お付き合いありがとうございました。