賃貸経営メールマガジン

情報力・交渉力の格差と消費者契約法

更新料
2011/9/15
賃貸経営・アパート経営ならヒロ・コーポレーション

皆さんこんにちは。今回は佐々木が担当いたします。

今年に入って、賃貸業界において重要な判決が最高裁判所で下されました。敷引き特約と更新料についてですが、いずれも原則有効の判決となりました。このことは本メールマガジンにおいても取上げさせていただきました。そもそも一連の争いはなぜ生じたのでしょうか。今回は争いの焦点となった消費者契約法について述べたいと思います。

消費者契約法が制定されたのは平成12年10月、施行されたのは翌年4月1日です。制定の目的は、消費者契約において、当事者である消費者と事業者との間には、契約に関する情報力や契約条件などの交渉力に格差があり、その下で消費者にとって不利益をもたらす契約を締結することを未然に防ぎ、消費者を保護しようというものです。具体的には、消費者契約法第10条にて、以下のように定められております。

第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

民法、商法、その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して、消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

※民法第一条第二項(基本原則)

権利の行使および義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

賃貸借契約においても、賃借人=事業者、賃借人=消費者となります。

敷引きや更新料の特約は、消費者の利益を一方的に害するものであるとして、消費者である借主側が同特約は消費者契約法第10条に違反し無効であると主張し争いとなったのです。

 

最高裁判所では、いずれも、特約は賃料以外の債務を、特約で賃借人に負わせるという観点から、消費者の義務を加重するものに当たるとしておきながら、賃貸借契約に条項が具体的に示されていれば、消費者である賃借人がそれを十分認識し、他の賃貸物件と比較検討したうえで自由に選択することが出来るとし、また、その債務が賃料の額や契約期間等に照らし、高額すぎるなどの特段の事情がない限り、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものということは出来ないとしております。

 

したがって、消費者契約法第10条の前段は該当するが、後段は該当しないということで、特約条項が有効と判断されたのです。

 

なぜ後段は、該当しないと判断されたのでしょう。

後段の要件を判断する要素として

1.条項が契約書にはっきり記載されているか

2.その条項を賃借人が理解し、合意しているか

3.条項に記載された賃借人の債務が高額すぎないか

4.賃貸人と賃借人との間に情報力・交渉力の格差がないか

であると思います。

契約締結の際、賃借人の負担を事前に説明し、合意が得られれば、その負担が高額でない限り有効なのです。契約前に説明するのですから、締結までの間に賃借人は、他の賃貸物件の契約条件と照らして比較検討できるのです。

比較検討の材料は、昔と違い、今はインターネットなどで情報を容易に取得することが出来ます。

このことから、事業者と消費者との間に情報力などの格差はあるとはいえず、消費者契約法第10条に違反しているとはいえないと判断されたのです。

さまざまな方法で情報が入手できるようになった昨今、ことに賃貸市場は、貸手市場から借手市場になっており、貸主は借主に自己の物件を選択してもらうために一苦労です。最高裁でこのような判決が下されたからといって、また貸手市場になるわけではありません。

判決後の市場への影響については、次回以降述べたいと思います。

お付き合いありがとうございました。

 

 

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