現状から見えてくる将来の市場
今週は清水が担当いたします。
東京の賃貸市場は繁忙期シーズン終盤ですね。
3月も残すところあと数日、4月になればピークは終息に向かいます。
ひと昔前までは「ハイシーズンにはオフシーズンよりも高い賃料で決まる」とまで言われ、まさに“かき入れ時”であったのが、今ではそうもいきません。
どこも空室問題に悩まされ、大手の家賃保証会社などは地方の空室補填費用が嵩んでしまい苦しい現状です。
下調べが念入りになっている“予習済”の入居者が相手ですから、何かを妥協しても賃料でお得さを感じる物件でなければ契約を決めてくれないため、貸主の立場ではこのハイシーズンで入居が決まるのなら、少しくらい安くなっても「空室を埋めておきたい」というのが本音ではないでしょうか。ハイシーズンに通常より高い賃料で決まる部屋があるとしたら、どうしてもそこに住みたい入居希望者と早期に運命的な出会いを果たした部屋だけかもしれません。
この入居者の流動ピーク期に各社が我先にと派手なキャンペーンを打ち出し、入居者確保に尽力するのは無理もないのです。
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人口は平成19年を頭打ちに減少へ転じ、既存物件は飽和状態に陥っています。
賃貸市場では単身者需要が大きな支柱となっているにも関わらず、少子化で学生数は年々減るばかりです。東京の大学で秋入学を推す話が浮上していますが、国際化や留学生の奨励という理由の陰には少子化による学生不足という大学運営側の意図があると考えられます。
また今年の春闘では、この不景気や大震災後の日本の株価下落などを考えれば労働側から賃金アップは望まない代わりに現状維持を要求したという話もあります。
社会人も所得が望めない中で、賃料などの固定支出をシビアに見るのは当然です。
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顧客の確保競争の激化は何も賃貸業界に限ったことではなく、“らくらくフォン”など携帯電話や“脳トレ”などのゲーム開発などが一例で、若い世代だけでは囲い込みが難しくなったいま、他業種界でも年配者へ獲得ターゲットを広げている時代です。
目線を変えれば、単身者は若者だけではありません。高齢化により単身年配者が増加しているのですから、これからの住宅は年配者の取り込みをもう少し考慮していくべきではないでしょうか。
身体に負担が少なく安全に住まえる住宅の需要が増えるのは目に見えている半面で、しかしながら貸主のターゲット意識が変わらないことにより“手すり”や“スロープ”、“バリアフリー”など仕様が追いつかず、高齢者需要に対し、ニーズに適した供給がまったく追いついていない現状が伺えます。
高齢化や生活保護者の増大の一方で、貸主が自然死や高齢者向けリフォーム費用などのリスクを伴うことを懸念するあまり、入居を敬遠してしまうなど世相を考えれば、東京の賃貸市場の陰りがいつまでも晴れないような気がしてなりません。
現状の傾向を考慮しながら、将来に適切な計画をしていく必要がありそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。