“標準”は変化する
みなさんこんにちは、今週は清水が担当いたします。
景気低迷や経済政策から回復の兆しが見えない中で家庭へのしわ寄せは繰り返され、増えない収入と増税の苦しみの狭間で、毎月の出費や食費のやりくりに追い詰められている家庭は少なくありません。
そのような中、私たちを取り巻く食事事情に変化が生じていることをご存知でしょうか。
費用のかかる外食は控えざるを得ない傾向にあり、外食産業全体が落ち込んでいることは周知のことです。外食産業の売上日本一の日本マクドナルドが“店舗削減”を発表したのも記憶に新しいですね。
一方で、弁当やお惣菜、冷凍食品など出来合いの調理品を購入したり、デリバリーなどを利用し家で食べる『中食』と、生鮮食品をスーパー等で求め家庭で調理し食す、いわゆる自炊にあたる『内食』は市場規模が格段に伸びているのだそうです。
人が食べることを止めるわけではないため、外食が減れば他が増えるのは当然と言えますが、人々の求めるニーズの変化の背景はそんな単純なものではないようです。
両者とも外食よりも安価で済み、中食にいたっては何より手軽であることが急速な市場拡大の要因ですが、これらの市場変化は、食費の節約といった生活費削減によるものだけに限りません。
『買物弱者』にあたる高齢者の割合が増えたことや、女性の社会進出による影響も考えられます。さらにはネット社会も後押ししていると考えられます。遠い産地の食品も取り寄せが出来る時代になり、楽なカード決済が行え、朝の内にネットスーパーで購入したものが当日の夕方前に届く仕組みは画期的です。
宅配や出前もメニュー比較や購入手続きがネット上で簡単にでき、外出どころか通話の手間さえも省きます。ここにきて食品メーカーでは時短や調理の手軽さが売りとなるヒット商品の開発に余念がなく、コンビニエンスストアなどは自社ブランド商品の開発と底上げにいっそう注力していると報道されたばかりです。
外食産業を支えている大きな柱は単身者であり無くなることはありませんが、ニーズに対し世の中の供給が徐々に増え確立されていけば、そこにライフスタイルを合わせていくことは十分に考えられます。また、新しいターゲットからの需要が増すことも考えられます。
そうなれば住まいに対する考えやニーズにも変化が現れるのではないでしょうか。
例えば震災以降には火災を懸念し、家庭で火を使うことを控える動きがあったとの見方があり、IHコンロの新たな需要拡大の可能性が出てきたと考えられます。
『巣篭もり消費』とか『内食回帰』という言葉さえ生まれています。ライフスタイルの変化は住宅とは切り離せません。ネット環境が定着したように、“標準”となるものは時代のニーズに合わせ変化していきます。その変化を柔軟に読み取り、うまく取り入れ『ずれ』や『差』を解消していくことで、求める側と提供する側の二つの歯車がうまくかみ合っていくのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。