1階の賃貸住宅
こんにちは、今週は清水が担当いたします。
今週は『1階の賃貸住宅』について述べてみたいと思います。
『入居者ニーズと意識調査2012~2013年※』の結果、入居物件決定の際に『決め手』となるものは、全体で最も決め手とされる『バストイレ別』に次いで『2階以上』が大変重要視されていることが分かりました。
1階が敬遠される理由は、やはり共通認識として安全面が挙がるでしょう。
空き巣被害や洗濯物の盗難に遭いやすいのではないか、外からの視線や公道からの騒音が生活に支障をきたすのではないかなど、不安要素が否めません。
実体験に因らず1階には住んだことの無い方でさえも、マイナスイメージとして定着してしまっています。特に防犯意識は賃貸に限らず、分譲や、また男女にも共通して言える事です。
さらには、採光や視界の眺望が十分に見込めなさそう、湿気がこもりやすそう、など健康面に直結する不安も理由の多くを占めており、これらも防犯面同様にイメージが固執してしまっている要素の一つです。
特に単身女性の場合、間取りや環境を気に入っても、1階であることだけで入居を諦める方も少なくありません。さらに厳しく言えば、ポータルサイトの検索時点から1階は検討から外すなど、内見数に加わってこないケースも多いのです。
アンケートの結果、女性社会人の81.0%は『2階以上』を必要と回答しています。
自宅併用住宅の1階部分に貸室を所有されているオーナー様などにとっては、たいへん気の毒な話です。実際、部屋が空くごとに苦戦を強いられているオーナー様も少なくなく、1棟物の新築物件などは間取りが同じであれば上中階から先に成約し、1階の成約が残ってしまうことは私たちもよく経験することです。
今回は、1階の入居をあきらめろという話をしたいのではありません。
これら定着イメージを払拭するための要素を計画に加え、入居者にいかにそれをアピールできるかが重要です。
1階の入居促進を図るためには、まず防犯面の不安を取り除くことから始めます。
空き巣被害は実際どの階にも発生します。建物全体が狙われにくい、隙を作らないことが重要であり、防犯性を高める工夫が入居率にも直結します。
洗濯物は室内でも十分に乾かせるスペースとその設備を整えてあげることで不在時の不安を軽減できます。外からの視線を遮る対策としては、屋外であれば目隠しも可能ですが、敷地の制約や採光の問題から設置できない場合では、内装とコーディネートしたブラインドを“おしゃれの差別化”として設けたり、目線より高い位置に採光や通風の為の窓を取り入れるなどして、機能性と同時に他物件に見ないデザイン性や洗練性を持たせることです。天井高の工夫や窓位置の変更だけでも、同時に圧迫感も解消し、解放感を確保できると1階らしさがより拭えるでしょう。
1階だからこそメリットだと考えるニーズをターゲットに盛り込むのも善策です。
幼い子供を持つ家庭などは、せめて自宅の中くらい階下を気にせず子供を自由に遊ばせたい気兼ねを持っていたり、老齢な父母と同居したいなどバリアフリー住宅やスロープ付きがメリットと捉える世帯も少なくありません。そんなニーズに応えた物件は“専用”物件としてではなく、ターゲットを幅広く見込める“多様化”物件になります。
つまりは貸し手の『どんな人に住んでほしいか』も重要ですが、やはり『どんな人だったら借りてくれるか』を優先に検討していくほうが入居への近道になります。
1階は全体数でみると敬遠されがちですが、ニーズが無いわけではありません。
いかにして取り込むかを突き詰めていけば、1階が上階よりも魅力的になる条件は賃料の設定のみではない事を知っていただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(※?リクルート住まいカンパニー 21C.住環境研究会 共同編集)