不動産取引のIT化への動き
こんにちは、今週は清水がお伝えいたします。
みなさんはテレビ電話(ビデオ通話)にて会話を楽しんだりしたことはありますか。複数の遠隔地を結び、双方向で相手の顔を見ながら通話することのできる便利なシステムです。なかでもスカイプは有名ですね。
このほど国土交通省で『ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会』が開催され、テレビ電話により重要事項説明を行った実証実験の結果についての中間報告がありました。
現行の宅地建物取引業法では、重要事項説明は宅地建物取引主任者が主任者証を明示した上で、原則対面にて説明を行うことを義務付けています。
ですから遠隔地の相手に重要事項説明を行う必要がある場合、移動費用や時間において負担が掛かり、契約までの効率が悪いことが否めません。
また、賃貸住宅の契約においては入居者の多くが若年層であり、もはやインターネットが生活の一部として馴染んでいる点からも、導入の方向へ議論を進めているのは自然だと言えます。
検証の結果、対面・非対面(テレビ電話)のどちらの場合も、消費者の重要事項説明の理解度について大きな差が無かったことから、今後の活用に向け一定の評価に繋がったようですが、非対面の場合にはその分説明を補う資料が増えるなど、対面時とは異なる実務的な問題が課題として残り、個人情報を扱う以上はセキュリティーへの対策なども当然不可欠な点でまだ検証を重ねていく必要があるようです。
現実にビデオ通話による重要事項説明が可能になれば、建物賃貸借契約などは取引相手に一度も直接会わずに成せるようになり易いという事です。
マイクとカメラを備えパソコンにオンラインアクセスできる環境が整えば、双方の時間の都合さえ付けば、いつでも重要事項説明が行えます。
この規制緩和が、今後の不動産仲介業者や管理会社の在り方を大きく変えるかもしれません。不動産会社は駅前一等地に店舗を構えずとも物件紹介から契約までが行えるようになります。例えば忙しいサラリーマンのニーズに合わせた状況下で、夜間に契約が行えるサービスなど店舗毎の差別化も生まれるかもしれません。
一方では、管理会社が空室情報を自社でのみ保有するようになり、IT教育のされた取引主任者をもって直客(仲介業者を介さず自社で入居募集)の獲得に尽力していく可能性もあり得ます。そうなれば、管理物件の少ない不動産会社や仲介専門業者の存在が淘汰され、生き残れなくなる懸念すら覚えます。
良くも悪くも、この重要事項説明のIT化への動きは、今後の不動産業界に大きな影響を与えることは言うまでもありません。今後の動向はぜひ気にしておきたいところです。