不動産取引IT化に向けた社会実験とは&賃貸経営セミナーのお知らせ
皆さんこんにちは、清水です。
以前、 不動産取引のIT化への動きを取り上げたことがありました。
『重要事項説明』は原則対面で行う必要がありますが、テレビ通話によっても可能にすること(IT化)は、取引に関わる時間の短縮や効率化が図れ、遠方地から移動するコストの削減にも寄与すると期待されることから、国土交通省が検討を重ねてきた取り組みです。
平成27年1月、国交省は社会実験の試行を公表し、期間は平成27年8月31日から29年1月末まで(予定)と、既に現状で実施されております。
社会実験における取引対象は、賃貸取引と法人間売買取引にのみ限定されます。個人が含まれる売買取引は、この度の対象ではありません。
社会実験に参加する宅建業者は、重要事項説明を行う全ての宅地建物取引士の登録はもちろん、テレビ通話の環境審査基準をクリアする必要がありました。
このテレビ通話に必要な環境とは、画面に取引相手の顔と同時に取引士の顔がワイプ表示可能であり、提示した取引士証の文字や相手の表情が画面で十分に読み取れる解像度を備え、さらにネット回線の種類や速度、使用するマイクにカメラ、取引を録画するためのビデオやデータ保存に至る様々な機器の詳細等であり、これらは書面提出が求められました。
つまり対面での状況と隔たりない環境を作ることが要件とわかりますが、462あった参加申請事業者の内、書類不備等で246社に絞られたことから通話環境を整え提出するだけでも結構なハードルだと予測されます。
では、実際にIT重説の実務はどう行われるのでしょう。
責務を明文化した主な流れです。
【重説前における責務】
・重要事項説明書の書面の事前送付
・IT重説についての説明、取引の相手方の書面による同意
・同様に、貸主(売主)の書面による同意
・取引の相手方が利用するIT環境の確認
【重説中の責務】
・テレビ通話の録画・録音(通話画面の確認行為から録画が必要)
・取引の相手方端末の表示や音声に問題がないことの確認
・取引士証の提示(相手方に読み上げてもらい、確認したことを確認)
・取引の相手方が本人であることの確認(身分証等の提示)
・重要事項説明の実施
【重説後の責務】では、IT重説の実施報告をはじめ、結果検証に必要なアンケートの回収や録画データ提出等が求められることになっています。
これら実務内容を見れば、IT化により時間の短縮が期待できると思われた点など、皆さんの印象はいかがでしょうか。事前に用意すべき必要書類が増えたり、接続環境が双方とも整ってからでないと、当然ながらIT重説を始めることすら出来ません。パソコン機器やネット回線の不具合にも対処できるよう人材教育もまた必要です。
事業者にとりIT化は、すぐに良いとはまだ言い難いと思われます。
上記のガイドラインに従い行われたものでなければ、重要事項説明の責務を果たしたとは認められず、宅地建物取引業法の違反行為に抵触する可能性も否めません。
いずれこの社会実験の結果を踏まえ、今後どのような改善策や安全な取引が検討されていくのか、次第によっては導入が先送られるのか、今後さらに注目されていくことでしょう。