「アパート外廊下崩落事故」について考える
今年の10月17日、北海道苫小牧市にある築約25年の木造アパートにおいて、外廊下の床が崩落し、2階に住む家族5人(女性4人と乳児1人)が重軽傷を負うという事故が発生しました。
家族5人が帰宅し玄関のカギを開けようとしたところ、外廊下の床が抜け落ち、およそ3m下へ落下してしまい、足の骨を折るなどの怪我を負ったというのが事故のあらましです。
こうしたニュースに接すると、賃貸物件のオーナーや管理会社など、賃貸経営に携わる立場で、いろいろと考える点が多いと思います。今回は、この事故から学べることは何か、という視点でお話ししたいと思います。
不動産投資が広まり、賃貸物件(特に中古物件)を購入し賃貸経営を始める(または買い増す)投資家の方も多いことでしょう。
賃貸経営においては、収益が大切であることはもちろんですが、建物の現状がどうなのか確認することも大切です。
場合によっては購入後に建物補修やメンテナンスに費用負担が発生することも考えられます。物件の購入にあたっては建物の過去の修繕履歴を売主に確認することや、インスペクション(建物状況調査)の積極的な活用も検討が必要でしょう。
今回のケースではオーナーが東京在住であるそうです。遠隔地にある物件の購入となると、場合によっては物件をオーナーが自身の眼で見ることなく購入するというケースも考えられます。
遠隔地に所在する物件の状態に対する危機意識がオーナーに残念ながら欠けていた、というのが実情ではないでしようか。
中古物件の購入にあたっては、建物の現状を把握する情報をどれだけ入手できるかが、物件購入後の建物維持・管理という点からも重要と言えるでしょう。
ニュースを見る限りでは、管理会社が再三にわたりオーナーに対して外階段の劣化・老朽化を報告していましたが、オーナーがこれに対して手を打たなかったようです。このように所有者が状況を放置したことに対して、責任を問われる可能性がある、と指摘する声も聞かれます。
もちろん管理会社も適切な報告などを怠れば、管理者としての責任も問われることでしよう。管理会社としても定期的な巡回などを通じて物件の状態を把握し、オーナーに対して報告し、場合によっては具体的な対策を提案していくことも求められるでしょう。
今回のような事故に対する備えとして、施設賠償責任保険があります。
被保険者(オーナー)が所有する物件において、物件の欠陥や管理、安全性の不備などにより事故が生じ、他人に怪我を負わせたり、他人の物に損害を与えたりした場合、被保険者が法律上の損害賠償責任を負うこととなった際に被る損害を補償するものが施設賠償責任保険です。
オーナーが物件所有者として、万が一の事故に備えてこうした保険に加入することも重要でしょう。
建物が時間の経過とともに劣化し、メンテナンスが必要となる状態になることは、不可避です。
将来のメンテナンスを念頭に置いた資金準備や定期的な建物点検、適切なメンテナンスの実施、保険への加入などは、安定的な賃貸経営という観点からも必須と言えるでしょう。
本社 運営推進事業部 岡野